トリツカレ男見てきました

私も会社員のお仕事で250カットほど、背景で参加しております。
今回120カットほど(5分くらい?)自分の描いた背景が続くシーンもあり、劇場でかなり緊張しながら見ました(笑)
会社の仕事は「自分の作品」ではないので、ブログに書くかどうかずっと迷っていたのですが、最近ちょっと考えが変わりました。
日々業務をこなす中で
「これ、一人で作る3Dアニメに応用できるな」と思うことがあったり、
他のかたの要望に応える工程だからこそ得られる発見があったり。
これは仕事報告というより、
作業の中で気づいたことの記録です。
教訓でもなく成功談でもなく、思考のメモに近いです。
↓作品の 予告ムービーはこちら
絵本のような温かさと、舞台美術のようなオシャレさ。
そしてちょっと不器用で愛おしいキャラクターたちが、やさしく心に残る作品です。
✦ 現場の役割(ざっくり)
今回は通常シーンも描かせていただきましたが、私は主に 歌唱シーン周りの画面作り を担当していました。
配色設計はビジュアルディレクターの方が決めるので、
私はその配色を 劇場の大画面でも成立する画面 に仕上げていく役割。
0→1の核的なものではなく、1以降の作業
つまり新規発明ではなく 視覚の説得力を足す役ですね
水彩の滲みを混ぜるのか、油彩の質感を足すのか。
100を超えるカットをどうシーンとして統一させるのか。
決まったノウハウや正解があるわけではなく、
演出意図を読みながら、毎回手探りで方法を決めていました。
✦ 大画面実験の答え合わせ
今回、自分の中にひとつテーマがありました。
「劇場サイズでも耐えられる画面はどこにあるのか?」
配色はPC上では“設計図”の段階。
そこから劇場で成立する画面にどう落とし込むか、
雰囲気を壊さずどう解像度を上げるかがずっと課題でした。
写真のような密度としてのリアルさならまだ手掛かりがあるのですが、
要素はどこか舞台美術に近い、構造としてはシンプルな背景。
正直、モニターだけでは確信が持てず、
スクリーンでの答え合わせはずっと気になっていて――
結果は、
強すぎず/潰れず/浮かず/ノイズにならず
この塩梅は、今後の個人制作(3Dアニメ)のテクスチャ設計にもそのまま応用できそうです。
よし。これ持ち帰って自分の創作でも試そう。
こういう答え合わせができるのは、普通に役得。
気づきの積み重ねが、いつか自分の作品の密度を1ミリ上げてくれると信じて、また作業に戻ります。
✦ そして “声”のお話

パンフレットを買ってようやく確信しました。
私の推している声優さんの一人村井雄治さんのお名前が、ありました。
作業中に見ていたVTR(仮編集の線画に声が乗った素材)があるのですが、
そこから村井さんの声が聞こえてきたシーンがあって、しかもめちゃくちゃ良いお芝居で……
(ちなみにそのシーンの背景を担当してたの、私です)
キャスト発表前だったので断定はできなかったのですが、
パンフで確認できてひっそり嬉しかったです。
完成版ではその役は別の声優さんの演技になっていましたが、
それももちろん素晴らしくて。
ただ、いつか村井さんのこの演技のラインが、
作品の表側でも誰かに届く瞬間があればいいなと思ったり。
(いまは現場だけで受信できる、ひそかな役得ですね)
コミカルさと切なさが同時に存在したり、
余裕のある言い回しの奥に迷いが一瞬だけ覗いたり。
矛盾した要素が同居している声って、
私はすごく魅力的だと思うタイプです。